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三日月の滝(みかづきのたき)

 これほど尋ね探してもまだお逢いすることができぬとは、いかなるしゅくごうであろうか。」と、小松女院をはじめじじょ一同こもごも涙にくれておりますと、おりから付近のあくどうどもがやってきて、女ばかりのこの旅人をあなどっていたずらをしかけてきました。昔、禁裡にあった時はげさんの者に指一本さされたこともない姫様なのに、おいたわしいことだとじじょたちは姫を守ってあくどうたちを防いでいますと、折よく森で木をきっていた小切り別当(こぎりべっとう)という老人が現われて、あくどうたちを追放ってくれました。

 姫は老人にこれまでのいちぶしじゅうを物語り、正高きょうのしょうそくをたずねますと、「それらしい都のお方が、数年前からこの里に住みつかれ、今はこの地一番の権門(けんもん)矢野検校様(やのけんぎょうさま)のおたくに入られて、検校(けんぎょう)の娘婿となっておられる。」との思いがけない話でした。聞くなり姫はぼう然として色を失い、声をあげて泣き悲しみましたが、やがて気をとり直し、懐中から一枚のたんざくをとり出すとじじょにやたてをとらせて、『笛竹の一夜のふしと知るならば吹くとも風に靡(なび)かざらまし』と一首の和歌を認めると、小松女院は笠とともに松の枝に結びつけ、都の方に向かって手を合すと、一気にだんがいにかけよるがはやいか、逆巻(さかま)くたきつぼの中に身を投げました。

 これを見た、十一人のじじょたちも、我れ先にとたきつぼに飛び込み、姫のあとを追いました。

 あまりのことに我を忘れて眺めていた小切り別当のじいさんも、「ああ、わしが年の取りがいもなくうっかりしゃべったばっかりに、あたら美しいおなごたちを死なせてしもうた。すまんこっじゃ。」と、じせきの念にかられ、これも続いてたきつぼに身を投げてしまいました。

 検校の邸の正高きょうは、里人からのしらせでこまをかって、三日月の滝へとかけつけて来ましたが、もはや後の祭りで、里人たちともども泣く泣く遺体を滝のほとりの嵐山(あらしやま)にほうむって、小松女院はじめ一同のぼたいをとむらいました。現在も嵐山滝神社(あらしやまたきじんじゃ)には、清原正高きょうごあいぞうの横笛、小松女院の懐鏡(かいきょう)、小切り別当のおのをはじめ、数々のゆいしょを止めるいひんが残されております。

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更新日:2011/3/18

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