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三日月の滝(みかづきのたき)

 正高きょうは身分の違いも忘れて「私の笛と小松女院様の琴と、音合せをさせていただきとう存じます。」と、みかどにお願いいたしますと、みかどは心良くお許しになりましたので、姫と向い合って笛と琴の音合せをすることになりました。

 それから毎日のように音合せが開かれるようになりました。だんだん正高きょうとお姫様は、お互いに深く恋し合うようになり、人々のうわさは、やがてみかどの耳に入り、身分の低い者が、姫をしたうとはふとどき者と大変なおいかりにふれ、正高きょうは豊後国(ぶんごのくに)にかこうされ、玖珠(くす)の地に着かれて、地頭(じとう)矢野兼久(やのけんきゅう)のやかたに身を寄せておりました。兼久は長野(ながの)きょうに正高きょうのためにやかたを建て、自分の娘をやかたにつかわして正高きょうの世話をさせておりました。

 心のやさしい娘さんは正高きょうに心をひかれておりました。

 正高きょうは娘の気持ちがわかりすぎるほどわかりますが、因幡(いなば)に流されたお姫様のことを思うと、今すぐ妻(つま)に迎える気持にはなれません。笛を吹くのもやめて、毎日馬に乗ってかりに出て自分の気持をまぎらせていました。

 そしてまた一年たちました。

 因幡に流された小松女院も正高きょう恋しさの思いは日一日とつのるばかりでした。そしてとうとう姫は梅の前以下十一人のじじょをともなって、ある晩、豊後の国へとながとの旅に立たれたのでした。夜の道を歩き続け、海を渡り、けわしい山を越え里を越え、土地の人に尋ねたずねて、やがて阿蘇小国宮(あそおぐにみや)の里の池のほとりに着かれた姫たち一行は、恋する人に逢うために女の魂であるふところ鏡を池の中に沈めて、正高きょうに一日も早くめぐり逢えるようにきがんしてから、萩(はぎ)のこみちを伝い、こけむす岩を踏みしめながら玖珠の方へと足を運びました。

 道々みんかに立寄っては水をこい、よぎを枕にのじゅくする辛さをなめ、天延(てんえん)四年九月二十九日、玖珠川(くすがわ)のほとり三日月の滝へとたどりつきました。

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更新日:2011/3/18

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